男「マスクありますか？」女店員「ﾁｯ…ありません」男「プロレス用のマスクなんですけど……」

男「あのー、マスクありますか？」

女店員（またか……）ﾁｯ

女店員「ありません」

男「欲しいのは普通のマスクじゃなくて、プロレス用のマスクなんですけど……」

女店員「えっ、プロレス！？」

女店員「どのようなマスクを？」

男「顔がハイエナになってるやつなんですけど……ありますか？」

女店員「それでしたらあります！」ｼｭﾀﾀﾀｯ

男「ありがとうございます」

女店員「お客様はもしかして……プロレスラーの≪ハイエナマスク≫の正体だったりします？」

男「！　……よく分かりましたね！」

女店員「分かりますよ！」

女店員「そのガタイのよさで、ハイエナの顔を模したマスクを欲しがる……といったら一人しかいません！」

男「ハハ、これは参ったな」

女店員「もちろんです！　ハイエナマスクの正体は謎ですから！」

女店員「あ、だけど一つだけお願い聞いてもらってもいいですか？」

男「なんです？」

女店員「得意技の“ハイエナラリアット”をやってもらえません？」

男「いいですよ！」

女店員（このフォーム……このド迫力！）

女店員「本物のハイエナマスクだ～！　感激～ッ！」

男「ハハハ……」

女店員「今度の試合も観に行くので、頑張って下さい！」

男「どうもありがとう」

＜会場＞

ワアァァァァァ……！

実況『スーパースター・ハイエナマスクの登場だァッ！』

実況『今宵も不敗神話を守ることができるのでしょうかァ！？』

カァーンッ！

ハイエナマスク「いくぞぉっ！」

レスラー「今日こそベルトを頂いてやる！」

ガシッ！

実況『両者組み合ったァ！』

ハイエナマスク「ぐっ……！」

実況『ドロップキックがさくれーつッ！　ハイエナマスク危うしーッ！！！』

ワァァァァ……！

女店員「頑張ってーっ！　ハイエナマスクー！」

ズドンッ！

レフェリー「ワン、ツー、スリー！」

ｶﾝｶﾝｶﾝｶｰﾝ!

実況『ハイエナマスクの大逆転勝利だァーッ！！！』

ワアァァァァァ……！

女店員「やったーっ！」

ハイエナマスク「みんな、ありがとう！」

ｽﾀｽﾀ…

ハイエナマスク「！」ﾊｯ

女店員「おめでとう！　かっこよかったです！」

ハイエナマスク「見ててくれたのか……嬉しいよ」

女店員「だって私、ハイエナマスクの大ファンだもの！」

ｳｲｰﾝ…

女店員「いらっしゃいませ！」

女店員「……あ！」

男「今日は包帯を買いにきたよ。トレーニング中、ケガをすることが多くてね」

女店員「それならいい包帯がありますよ！」

いつしか二人は恋に落ちていった――

「なんだアイツ？」　「乱入だ！」　「やっちまえーっ！」

格闘家「初めまして」

ハイエナマスク「君は……？」

格闘家「俺は各地で道場破りをしている格闘家だ」

ハイエナマスク「！」ﾊｯ

ハイエナマスク「知り合いの空手家やボクサーが病院送りになったというのは……君の仕業か」

格闘家「その通り、そして次の相手はお前に決めたというわけだ」

女店員「大丈夫なの？」

女店員「あの男、ものすごく強そうだったけど……」

男「たしかに強いだろう。だけど、俺だってプロレスラーとしてのプライドがある」

男「あそこまで言われたら、挑戦を受けないわけにはいかないよ」

女店員「頑張ってね！」

男「ああ……絶対勝つ！」

カァーンッ！

ハイエナマスク「さあ、来い！」ﾊﾞｯ

格闘家「力比べしようってか？」

格闘家「あいにくだが、俺は格闘家だ。プロレスには付き合わない。自分のペースで攻めさせてもらうよ」

ハイエナマスク「……」

実況『動きません！　両者動かないッ！　静かな立ち上がりとなりましたァ！』