【悲報】コロナ禍のアフリカで「女性器切除(FGM)」が急増

その傾向が顕著に表れているのが、アフリカだ。ケニア西部の西ポコット郡で反FGMの活動をしているドミティラ・チェザンは、同地域では4月末以降、約500人の少女が女性器切除の処置を受けたと見積もる。
彼女のもとにはコミュニティがおこなう「大量施術」で切除された少女たちから相談の電話がかかってくるという。

ケニアでは女性器切除は法律で禁じられているが、いまでも15～49歳の女性の5人にひとりが施術を受けている。
それでもコロナ前は、啓発活動のおかげでFGM撲滅に対する理解は進みつつあった。ところが、コロナによってそうした努力が水の泡になったとチェザンは言う。

チェザンによれば、女性器切除が増加している原因のひとつに、感染症対策によって学校が閉鎖されていることが挙げられるという。

さらにチェザンは、コロナによって先が見えない不安が広がっていることも一因に挙げた。
ソマリア出身の考古学者サダ・マイアは、女性器切除はもともと厄災を払うために神に犠牲を捧げる儀式としておこなわれていたと指摘している。
チェザンによれば、コロナの終息を願うため、亡くなった娘の遺体をわざわざ掘り起こして女性器切除の施術をした家族もいたという。

また、景気が低迷し、社会が不安定化するなか、娘を早く嫁に行かせるために施術を急ぐ親もいる。
女性器切除には大人になるための通過儀礼という側面もあり、施術を済ませた女性は結婚の準備ができたと見なされる。
UNFPAによれば、コロナによる世界的な不況で、今後10年間で1300万件もの児童婚が発生する恐れがあるという。

ケニアの隣国ソマリアでも3月から女性器切除の被害に遭う少女が増えている。ソマリアは女性器切除の問題が特に深刻で、女性の98％が処置を受けていると言われている。
ソマリアでも女性器切除は違法だが、保守派や宗教団体が違反者に対する罰則を設けることに反対しているため、規制がなかなか進まないのが現状だ。
UNFPAは、コロナの影響で同国では2020年に約29万人が女性器切除の施術を受けると予測する。

コロナ禍での女性器切除の急激な増加は、女性たちの命も危険にさらす。

女性器切除の処置はたいてい、近代的な医療トレーニングを受けていない産婆か祈祷師によっておこなわれる。
処置にはナイフやカミソリ、ガラスの破片などが使われることが多く、術中の大量出血で女性が死に至ることも少なくない。

ソマリアの反FGM活動家のイフラ・アフメドによれば、こうしたリスクはコロナ禍でさらに増しているという。

「ソマリアでは首都のモガディシオでも私立病院が閉鎖されていますし、大量に出血しても、家族は感染のリスクを恐れて娘を病院に連れて行こうとしないんです」

国連は、貧困や飢餓、気候変動などの世界的課題を解決することを目的に作られた「SDGs（持続可能な開発目標）」において、2030年までに女性器切除を撲滅することを目標に掲げている。
だが、コロナの世界的流行が、この目標の大きな障害になることが懸念される。