世にも奇妙なバイト 自殺部屋清掃

数年前の夏、大学からの友人であるノリオ(仮)から

割の良いバイトがあるんだけど、2～3日やらない？
30万は出すよというLineが入った。

根はいいやつなのだが、金遣いが荒いという悪癖があり
仕事は完全に歩合給でトップの成績を残していたというのに
常に金がないという中々破天荒な男だった。

実は付き合いのある不動産屋の管理物件で
自殺した女がいたらしい。

ただ、運の悪い事に当時は夏真っ盛り
周辺の部屋から異臭と大量の虫がでるという
クレームで気付いた時にはすでに遅く。

完全に死体は腐乱していたとの事。

鍵屋の下請けも持っていたノリオは
取り急ぎ鍵屋を連れて現場に向かった。

管理会社のおじさんと合流して玄関前に立った時には
外からでも腐乱臭が漂ってきていたらしい。

なので、入居者の部屋に無理矢理入る時は
まず生存確認という建前を使う。

全く連絡が取れない重滞納者などに対して
生存確認という名目で警官を現地に呼び
立会いをさせて鍵を破錠するという方法だ

余談だが、この鍵屋は
重滞納者の明け渡し訴訟やこういった自殺疑惑案件の
破錠や開錠も多く行なっているそうなのだが
そういったアングラな案件の時はやけにテンションが
高くなるらしい。

これ、絶対やばいっすよ！
これ、絶対やばいっすよ！

を連呼しながら、ハイテンションで
破錠していたそうだ。

管理会社や鍵屋やノリオ含めた
人間はもちろん外でそのまま待機。

第１発見者は警官にやらせるのがセオリーだ。

警官が一応の声かけを行いながら室内へと入る。
ただ、ドアを開けた瞬間強烈な臭気が外へ飛び出てきたそうだ。

やがて消防だか救急が現着し
生々しい曲線が見える大きなブルーシートが
担架に乗せて運ばれていったようだ。

こういった特殊な現場というのは
そもそも相場は恐らくない。

請負う業者はたくさんいるだろうが
はっきりいって特殊現場の一言で
いくらでも値段を釣り上げる事はできるからである。

後日、ノリオは不動産屋のおじさんに早速連絡を入れ
内装の見積りを正確に取りたいが、そもそもゴミに埋め尽くされていて部屋をまともに見れない。

ゴミ自体も常に悪臭を放ち続けているし
工事をやるにしろやらないにしろ、撤去だけは
した方がいいという旨を伝えた。

不動産屋のおじさんも管理側として
理解はしているのでノリオの言い値の額を
大家さんに伝えた所、その値段で作業の許可は降りたらしい。

まぁ、学生時代から勢いで行動する奴だったので
結論から言うとかなり雑な内容だった。

俺が見通しが甘い所を指摘しまくり
ケチらずに経費は使わないと日数を無駄に消費するぞと
喝を入れながら、作業内容を是正していった。

そうして、作業日も決まったので
後は当日を迎えるのみとなった。

しかし、オレ達2人も、そんな特殊な現場で作業するというのは、初めてだったので想定外のイレギュラーに多々遭遇することとなる。

まず、具体的な内容としては
ゴミは現地で分別し
ノリオが仕事で使っているハイエースと
ノリオの嫁実家から借りてきた軽トラの2台で
分別したゴミを運搬する。

運搬したゴミは
ノリオの事務所の倉庫に放り込んでおく。

その後、分別したゴミを家庭ゴミとして
ノリオ宅から数週間に分けて排出し

粗大ゴミに関しては、直接処分場に持ち込み
有料で処分してもらうという
なんともパワープレイな計画だった。

だが俺たちはこの現場を軽くみすぎていた、、、

その瞬間強烈な臭気が襲ってくる。

軽くえづきながらも
このままでは廊下に臭気が漏れてしまうので
2人とも急いで中に入ってドアを閉める。

ブレーカーを落としているので
部屋は完全なる暗闇である。

スマホのライトで部屋を照らしながら
土足のまま部屋に入ると足元で卵の殻がパキパキ
割れる音がした。

ふと、疑問に思い足元をライトで照らした。

そう、蛆のサナギの殻である。
それに気づいて天井や壁にライトを向けると
ありとあらゆる場所にハエがびっしりととまっている。

凄惨な光景に閉口しつつも
ノリオが玄関スペースのすぐ上にあるブレーカーをあげた。