女「死亡フラグはいかがですかぁ?」男「まだ死にたくねえよ!」

1 名前:匿名のゴリラ 投稿日時:2021/01/11(月) 21:02:16.212 ID:S/sr4XX30
第一話『俺は部屋に戻る!』

女「あんた、死臭がするねえ」

男「は?」

女「死臭というか、負け犬臭というか、ろくな目にあわない臭というか……」

男「なんなんだいきなり! 失礼な女だな!」

女「あー、ごめんなさい。気を悪くしないでねぇ」

男「道歩いてたらいきなり死臭だの負け犬だのいわれて気を悪くしない奴がいたらお目にかかりたいよ」

2 名前:匿名のゴリラ 投稿日時:2021/01/11(月) 21:05:48.127 ID:S/sr4XX30
女「ようするに、死亡フラグ立ってるってやつね」

男「死亡フラグ?」

女「“負けフラグ”とか“失敗フラグ”とか言い換えてもいいかもねえ。聞いたことあるでしょ?」

男「聞いたことはある。漫画や小説で“登場人物がこういう行動をしたら死ぬ”みたいなお約束だよな」

女「そそ。ようするに、あんたにはよからぬことが起こる予感がするのよぉ」

男「そりゃ人間生きてりゃよからぬことの一つや二つぐらい……」

女「だけど、あたしは常々思ってたの。
  死亡フラグだって正しく使えば、きっと人を助けられるんじゃないかって」

男「無視かよ」

女「そこで、あたしが作ったのはこの玉!」

卓球ボールぐらいの白い玉を取り出す。

3 名前:匿名のゴリラ 投稿日時:2021/01/11(月) 21:08:26.661 ID:S/sr4XX30
男「なにこれ?」

女「これは≪死亡フラグ玉≫っていってね。死亡フラグパワーを玉にしたものよ」

男「意味が分からないんだが」

女「これを持ってればあんたはもう安心! 死亡フラグはいかがですかぁ?」

男「いや、いらないよ! まだ死にたくねえよ!
  死亡フラグの話をしてから、なんでこんなもん勧めてくるんだよ!」

女「だからさっきもいったでしょ。あんたを助けるためよ」

女「この玉を肌身離さず持ってなさい。そうしたら、いざという時破裂して、
  あんたを助けてくれる! ……かもしれないわぁ」

男「…………」

4 名前:匿名のゴリラ 投稿日時:2021/01/11(月) 21:11:23.197 ID:S/sr4XX30
男「死亡フラグパワーだとか……バカバカしい」

女「そうやって未知の力を軽視するのは立派な死亡フラグよねえ」

男「あんたみたいな得体の知れない女に関わっちゃうのも死亡フラグだよな」

女「ヒヒ、上手い返ししてくるわねえ。で、どうする? 欲しい?」

男「…………」

男は考える。
女の話は意味不明で荒唐無稽だが、≪死亡フラグ玉≫の迫力がただならぬものであることも確かだった。

男「分かった……受け取るよ」

女「じゃ、一万円いただきまぁす」

男「え、金取るの!?」

5 名前:匿名のゴリラ 投稿日時:2021/01/11(月) 21:12:05.944 ID:tbkjralL0
みてるぞ
6 名前:匿名のゴリラ 投稿日時:2021/01/11(月) 21:14:23.590 ID:S/sr4XX30
女「そりゃそうでしょ。それにタダより高い物はないっていうわよ。
  タダでもらった未知のアイテムなんてかえって不安でしょ? 浦島太郎の玉手箱みたいでさ」

男「一理はあるけど……」
 (こんなわけ分からん玉に一万か……)

しばらく考えてから、

男「分かった。買うよ」

女「毎度ありぃ。なるべく肌身離さず持っててね」

男「せっかく買ったんだしそうするよ。ああ、それと――」

女「?」

男「≪死亡フラグ玉≫ってあまりにもそのまんまだし、なんかダサくない?
  ≪フラグボール≫のがかっこよくない?」

女「あたしのネーミングにケチつけないで! 大きなお世話よ!」

7 名前:匿名のゴリラ 投稿日時:2021/01/11(月) 21:17:24.259 ID:S/sr4XX30
― 会社 ―

後輩「婚活合宿? へえ、そんなのがあるんですか」

男「ああ、登録してた結婚相談所の企画でな。
  コンピュータが選び出した男女3対3でペンションに一泊するんだ」

後輩「楽しそう! だけどペンションなんて、ドラマだったら殺人事件でも起きそうな舞台ですよね」

男「物騒なこというなよ」

後輩「すみません。それはさておき、せっかくの合宿なんですからガツガツいった方がいいですよ。
   先輩妙にお人よしなところあるから……」

男「分かってるよ」

男(≪死亡フラグ玉≫なんて、わけの分からん物買っちゃうぐらいだしな)

8 名前:匿名のゴリラ 投稿日時:2021/01/11(月) 21:18:24.443 ID:Fes8s0XX0
いいぞ
9 名前:匿名のゴリラ 投稿日時:2021/01/11(月) 21:20:37.066 ID:S/sr4XX30
― ペンション ―

リビングには六人の男女がいた。

男(“ガツガツ婚活だ!”と意気込んで来たはいいものの……)

チャラ男「マジで~?」

ギャル「ウッソー!」

金髪「バイト先の店長、殴ってやったぜ!」

ミニスカ「かっこいい~!」

こんなノリで男女四人は延々と酒を飲んでいる。

男(あぶれてしまった……)

男(ていうか、どう考えても俺はあいつらと合わないだろ! なに考えてんだコンピュータ!)

10 名前:匿名のゴリラ 投稿日時:2021/01/11(月) 21:23:41.600 ID:S/sr4XX30
男(寂しいからってペンションの管理人と話そうにも、管理人は――)

管理人『今日はちょっと街に用がありますので、私はペンションにおりません。
    それにそっちの方が色々と都合がよろしいでしょう』

管理人『動物が入ってくることもありますので、くれぐれも戸締まりには気をつけて下さい』

男(とかいって留守だし。他に進行役みたいな人間もいない。
  ようするに、この合宿って男女6人を一晩ペンションに閉じ込めてくんずほぐれつさせる……
  みたいなのが狙いなんだろうな。ったく、とんだ結婚相談所だ!)

男(で、残る女一人はというと――)チラッ

11 名前:匿名のゴリラ 投稿日時:2021/01/11(月) 21:26:42.027 ID:S/sr4XX30
眼鏡女「…………」

男(ずっと本読んでる。俺なんか眼中にないようだ。暗い印象はあるが綺麗ではある。
  後輩もガツガツいけっていってたし、ようし……)

男「あの……ちょっとお話しでもしませんか?」

眼鏡女「いえ、結構です」

男「でも、せっかくこんな合宿に来たんだし、あなたも婚活してるんでしょ?
  もっとコミュニケーションした方が……」

眼鏡女「私は別に婚活がしたいわけではありません」

男「は……? どういうこと?」

12 名前:匿名のゴリラ 投稿日時:2021/01/11(月) 21:29:46.462 ID:S/sr4XX30
眼鏡女「私は作家志望でして。今度の作品は“婚活”をテーマにしようと思っているので
    体験を作品に生かすために、婚活とはどういうものか合宿に参加しただけのこと。
    別に本気で結婚するつもりはありません」

男「はぁ」

眼鏡女「というわけで、あなたと雑談を楽しむつもりはありません」

男「そ、そうですか。失礼しました」

男(婚活を題材にするのなら、それなりに本気で取り組まなきゃ意味ないと思うけど……
  いっても無駄だろうし、やめとこう)

男(あーあ、俺もなんか本でも持ってくればよかった)

男(あの死亡フラグ女の言うとおりだった。ろくな目にあわねえな、俺……)

ふと、この合宿にも持ってきていた≪死亡フラグ玉≫に手をやる。

13 名前:匿名のゴリラ 投稿日時:2021/01/11(月) 21:33:21.722 ID:S/sr4XX30
時間は流れ……

チャラ男「ちょっと小便行ってくるわ~」

金髪「トイレあっちだぞ?」

チャラ男「せっかくだし大自然の中でやってくる」

ギャル「ウケる~!」

ミニスカ「かっこいい~!」

男(バカ四人組はずーっとあんなノリで……)

眼鏡女「…………」

男(作家志望女はずーっと本読んでる)

男(なんなの? なんなのこの空間?
  もし、後輩の言う通りここで殺人事件が起こるとしたら、犯人は俺だな。
  動機はこのわけ分からん空間に耐えられなくなったから。名探偵も呆れるだろうな)

14 名前:匿名のゴリラ 投稿日時:2021/01/11(月) 21:36:18.782 ID:S/sr4XX30
それからしばらくして――

パァンッ!

男「!」

男(なんだ!? ≪死亡フラグ玉≫が弾けた!)

すると――

男「こんなところにいられるか! 俺は部屋に戻る!」

大声でこう宣言すると、男の足は勝手に歩き出した。

男(なんだこれ……どういうことなんだ!?)スタスタ

四人組も作家志望女も一瞬驚いていたが、すぐ自分たちの世界に戻ってしまった。

15 名前:匿名のゴリラ 投稿日時:2021/01/11(月) 21:36:51.065 ID:FPfC2ny7r
何が起こるのやら
16 名前:匿名のゴリラ 投稿日時:2021/01/11(月) 21:39:26.251 ID:S/sr4XX30
スタスタ…

男(どこ向かってるんだ俺は。こっちは俺の部屋じゃないけど――)

スタスタ…

男(なんだ、この部屋? 倉庫? いい匂いするから食料でも入ってるのかな。他の部屋よりも頑丈そうだ)

スタスタ…

男(お、俺の部屋だ)

妙な回り道をしてから、自分の部屋にたどり着く。

17 名前:匿名のゴリラ 投稿日時:2021/01/11(月) 21:42:23.030 ID:S/sr4XX30
男(死亡フラグ玉は弾け、俺は部屋に戻ってしまった)

男(たしかにミステリー物だとこうやって『部屋に戻る!』っていって戻った奴は
  後で死体になって発見されるよな……)

男(これになんの意味が……?)

男(ま、いいや。こうして部屋に戻ったわけだし、一人でのんびりしてよう)

ふと窓の外を見る。

男「…………!」

男(熊じゃん……! 結構でかい……!)

18 名前:匿名のゴリラ 投稿日時:2021/01/11(月) 21:45:56.578 ID:S/sr4XX30
まもなくリビングから悲鳴が上がる。

キャァァァ… イヤァァァ… クマダー!

男(おいおい、なんで入り込んで――)

男(さっき小便しに外に出た奴がいたな! あいつがドア開けっぱなしにしてたのか!)

男(かなりでかい熊だし、本格的に暴れられたらあいつらひとたまりもないだろうな。
  それどころか俺が狙われる危険性もある。そうなったらこの部屋のドアじゃ頼りない)

男「あ、そうだ!」

男はさっき見かけた倉庫に走る。

バタンッ!

男「ここは他の部屋より頑丈そうだし、あの熊も入ってこられないだろう。あーよかった……」

男(これで俺だけ助かる……。ありがとう死亡フラグ……)

19 名前:匿名のゴリラ 投稿日時:2021/01/11(月) 21:46:36.789 ID:nKbO1vj30
まだ第一話か
20 名前:匿名のゴリラ 投稿日時:2021/01/11(月) 21:47:13.779 ID:F0El4V+N0
他のやつ全滅じゃねえかwwww
21 名前:匿名のゴリラ 投稿日時:2021/01/11(月) 21:48:34.529 ID:S/sr4XX30
男「――って、やっぱりそういうわけにはいかないだろうがぁ!」
 (やっぱり俺ってお人よしだぁ!)

男は倉庫に積まれた箱の一つを持ってリビングに駆けつける。

熊「ガァァァァ……!」

チャラ男「こっち来るなァ! 来るんじゃねェ!」

熊に向かって、空き缶を投げるなどの儚い抵抗をする四人組。

眼鏡女「…………」ガタガタ

本を持って震えている眼鏡女。

男(まだ全員無事だったか! よし、これを!)

熊の近くに箱を投げつける。中に入った果実が床に散らばる。

熊「ガァ……」

男(熊の注意が果物に向いた!)

22 名前:匿名のゴリラ 投稿日時:2021/01/11(月) 21:51:38.537 ID:S/sr4XX30
男「みんな、こっちに来るんだ! そーっと、そーっと!」

チャラ男「わ、分かったぁ!」

四人組はどうにか移動を開始する。

男「君も早く!」

眼鏡女「ご、ごめんなさい……足がすくんでしまって……」

男「!」

眼鏡女「私はいいの……みんな逃げて……」

男「バカいうな! 作家になるんだろ!? ほら、手を貸せ!」サッ

眼鏡女「は、はいっ!」

女を背負うと、男は熊を刺激しないよう倉庫に駆け込んだ。

23 名前:匿名のゴリラ 投稿日時:2021/01/11(月) 21:54:38.370 ID:S/sr4XX30
バタンッ! ガチャッ

男「この倉庫なら……あの熊も壊して入ってくるのは無理だろう」

男「スマホから警察に連絡する。これで後はどうにかなるはずだ」

チャラ男「俺のせいで……みんなごめん……」

金髪「助かったぁ……」

ギャル「怖かったよぉ……」

ミニスカ「絶対死ぬと思った……」

男(こんな連中でもこういう時はしおらしくなるんだな)

眼鏡女「…………」ギュッ

男(ところでこの子、いつまで俺にひっついてるんだ……? まぁいいけどさ)

24 名前:匿名のゴリラ 投稿日時:2021/01/11(月) 21:57:23.907 ID:S/sr4XX30
やがて――

管理人「皆さん、ご無事でよかった! 熊は射殺されましたのでもう大丈夫です!」

管理人「それにしても、熊なんてここ数年見なかったのですが……」

ワイワイ… ガヤガヤ…

男「ふぅー、助かったね!」

眼鏡女「…………」ギュッ

男「もう大丈夫だよ。熊は退治されたから」

眼鏡女「はい……」

25 名前:匿名のゴリラ 投稿日時:2021/01/11(月) 22:01:11.713 ID:S/sr4XX30
眼鏡女「ありがとうございました。あなたがいなきゃ、私は今頃熊の餌でした」

男「作家を目指してるんだよね。いい作家になってくれよ」

眼鏡女「……あ、あのっ!」

男「ん?」

眼鏡女「よかったら……また会ってくれませんか」

男「…………」ドキッ
 (この子……こんなあどけない表情もできるのか……)

男「ふぁい」

かっこよく決めたつもりが気の抜けた返事になってしまった。

26 名前:匿名のゴリラ 投稿日時:2021/01/11(月) 22:04:22.015 ID:S/sr4XX30
― 街 ―

デートを楽しむ二人。

男「新人賞取ったんだって? おめでとう!」

眼鏡女「ありがとうございます」

男「これで君も作家の仲間入りなわけだ」

眼鏡女「まだまだこれからですよ。もっともっと精進します!」

男(そういやこの辺りだったな。あの死亡フラグ女と会ったのは……)キョロキョロ

眼鏡女「どうしました?」

男「(いないか……)いや、なんでもない」

女「…………」コソッ

女「ヒヒ、よかったわねえ……」

女「熊と安全地帯の存在に気づいたのはあたしの道具のおかげだけど、
  その後皆を助けて、あの子とくっついたのは紛れもなくあんたの力よぉ」

女「やっぱりあんたはあたしが助ける価値のある男だったのね」

27 名前:匿名のゴリラ 投稿日時:2021/01/11(月) 22:06:30.721 ID:S/sr4XX30
客「あの、なに一人でボソボソいってるんです? この白い玉の説明をして欲しいんですけど……」

女「ああ、ごめんなさぁい」

女「これはね、≪フラグボール≫っていう玉でね……」

― おわり ―

28 名前:匿名のゴリラ 投稿日時:2021/01/11(月) 22:07:50.807 ID:FPfC2ny7r

なかなか
29 名前:匿名のゴリラ 投稿日時:2021/01/11(月) 22:09:00.802 ID:F0El4V+N0

名前変えたんだな
30 名前:匿名のゴリラ 投稿日時:2021/01/11(月) 22:10:38.512 ID:S/sr4XX30
第二話『勝率は99%です』

パシャッ パシャシャッ パシャッ

記者「今度の戦いはタイトルマッチ前の大事な前哨戦といったところですが、
   ご自身で考える勝率はいかがでしょう?」

格闘家「俺と彼の実力は伯仲していますからね。五分五分といったところでしょうね」

記者「なるほど、蓋を開けてみるまで分からないと」

格闘家「そういうことです」

31 名前:匿名のゴリラ 投稿日時:2021/01/11(月) 22:10:58.063 ID:KnR/BkrW0
一話約一時間か……
32 名前:匿名のゴリラ 投稿日時:2021/01/11(月) 22:11:39.620 ID:/zcTzOYU0
ワロタ
あと何話あるんだ
33 名前:匿名のゴリラ 投稿日時:2021/01/11(月) 22:13:13.246 ID:S/sr4XX30
実況『あーっと判定負け! タイトルマッチに大きく影を落とす一戦となってしまいました!』

解説『後半のラウンドで勝利への執念が足らなかったように思えます。残念ですねえ』

ワァァァ… ザワザワ…

格闘家「くそっ……!」

観客A「またこれだ。強いことは強いけどいっつも肝心なとこで勝てないんだよな~」

観客B「こりゃタイトルマッチもダメだろ。チャンピオンは今日の相手より強いし」

観客C「そろそろファンも見放すだろ、これじゃ」

34 名前:匿名のゴリラ 投稿日時:2021/01/11(月) 22:16:27.402 ID:S/sr4XX30
格闘家(あれだけ練習してるのに……どうして勝てないんだ、ちくしょう!)スタスタ

女「あ、負け犬だ」

格闘家「…………」ギロッ!

女「こないだの試合見てたわよぉ。惜しかったわねえ。
  だけど競技の世界なんて結果が全てだし、惜しくても負けちゃあねえ」

格闘家「なんだお前は……」

女「次はタイトルマッチなんでしょ? だけど、いつもみたいに惜しいところで勝利を逃すでしょうねえ」

格闘家「…………」ムカムカ

女「ようするに死亡フラグ立ってるってやつぅ? ヒヒ」

格闘家「このぉっ!」ブンッ

女「あらよっと」ヒラリ

格闘家「!」

女「あたしが避けてくれてよかったわねえ。もし当たってたら格闘家生命終わってたわよぉ」

格闘家「す、すまん……!」

35 名前:匿名のゴリラ 投稿日時:2021/01/11(月) 22:19:32.004 ID:S/sr4XX30
女「あたしはね、あんたみたいな死亡フラグ立ってる奴を死亡フラグで助けてあげるのが趣味なんだけど、
  これ買わない?」

格闘家「この白い玉は……?」

女「≪フラグボール≫っていって、死亡フラグパワーが込められたボールよぉ」

女「これを肌身離さず持ってれば、いざという時破裂してあんたを助けてくれる。
  ……かもしれないわぁ」

格闘家「いくら勝ちたくても、インチキするのは……」

女「別にインチキじゃないわぁ。あんたが強くなるわけじゃないもの。
  ただ、あんたが実力を出せるようになるかもしれないけど」

格闘家「実力を……?」

結局、格闘家は一万円で≪フラグボール≫を購入してしまった。

女「毎度ありぃ」

36 名前:匿名のゴリラ 投稿日時:2021/01/11(月) 22:22:35.550 ID:S/sr4XX30
― ジム ―

格闘家「シュッ、シュッ、シッ!」

バシッ! バシッ! バシィッ!

トレーナー「分かってるだろうな。今度のタイトルマッチを逃したら、
      多分お前はファンから見捨てられるし、こんなカード組んでもらえなくなる」

格闘家「……シッ!」バスッ

トレーナー「つまりラストチャンスだ。心してかかれよ」

格闘家「分かってますよ!」バスッ

格闘家(練習はしてる。才能だってあるはず。なのにいつもいつもでかい試合は落とす。
    なんでだ……なんでなんだ……!)

バシィッ!

37 名前:匿名のゴリラ 投稿日時:2021/01/11(月) 22:25:37.631 ID:S/sr4XX30
タイトルマッチ直前、記者会見が開かれる。

パシャッ パシャシャッ パシャッ

記者「いよいよタイトルマッチですね。意気込みをお願いします」

格闘家「やっと掴んだチャンスです。これがラストチャンスのつもりで臨みます」

記者「しかし、先日の戦いでは惜しくも判定で負けてしまい、
   その敗北を引きずってるのではという声もありますが、いかがでしょう?」

格闘家「そんなことはありません。すでに気持ちは切り替えています」

記者「今回の戦い、ずばり勝率はいかがでしょう?」

格闘家「そうですね。相手が相手ですし、やはり五分――」

パァンッ!

格闘家「!?」

格闘家(≪フラグボール≫が……破裂した!?)

38 名前:匿名のゴリラ 投稿日時:2021/01/11(月) 22:28:08.602 ID:S/sr4XX30
格闘家「勝率は……99%です」

ザワッ……

ザワザワ… ドヨドヨ…

格闘家(あれ、口が勝手に!?)

記者「いつになく強気な発言ですね!」

格闘家(五分五分っていおうとしたのになんで……!)

記者「明日の一面記事は、『格闘家、勝率99%宣言!』でいかせていただきますよ!」

格闘家(待ってくれ、なんで……!)

39 名前:匿名のゴリラ 投稿日時:2021/01/11(月) 22:30:31.929 ID:S/sr4XX30
― ジム ―

格闘家「はぁ……」

格闘家(なんで俺はあんなことを口走っちゃったんだ! 勝率99%だなんて……!
    これで負けたら大恥じゃないか!)

格闘家(こういうでかいこという奴はだいたい負けるもんだろうが! それこそ死亡フラグ――)ハッ

格闘家(あれか! あの≪フラグボール≫が俺にそう言わせたのか!)

格闘家(くそっ、あんなもん買うんじゃなかった……!)

格闘家「くそっ! くそっ! くそぉぉぉぉぉっ!」

ドカッ! バスッ! ドカッ!

がむしゃらにトレーニングする。

試合が始まる――

40 名前:匿名のゴリラ 投稿日時:2021/01/11(月) 22:33:27.715 ID:S/sr4XX30
― リング ―

ワァァァァ… ワァァァァ…

実況『リング中央で向き合うチャンピオンと挑戦者、まもなくゴングです!』

カァーンッ!

格闘家「せやっ!」

チャンプ「シッ!」

バシッ! ドカカッ! ガッ!

互角の攻防。チャンピオンは流石だが、格闘家も決して劣ってはいない。

トレーナー(今のところいい流れだ……あいつはトップに立てる実力を備えてるんだ!
      だが、いつも勝負どころになると――)

41 名前:匿名のゴリラ 投稿日時:2021/01/11(月) 22:36:16.967 ID:S/sr4XX30
ドカッ! ガッ!

格闘家(ぐ……!)

チャンプ「シッ、シッ!」

チャンピオンの猛攻。徐々に格闘家が防戦一方になっていく。

格闘家(なんて激しい攻撃だ……。勝てないかもしれない……)

トレーナー(また悪い癖が出てきた!)

トレーナー(いつも肝心なところで弱気になってしまい、勝機を逃してしまう!)

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