医師「アクリル板でコロナの流行は抑制できない」 反日か？

アクリル板ではコロナの流行は抑制できない

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/cvdprem/lecture/komamura/202101/568779.html

緊急事態宣言が1月8日付で発出されてから原稿執筆時点で10日が経過しているが、今でも重症者数は増える一方で、大都市圏では医療崩壊が起きているとの報道も相次ぐ[1, 2]。今の国のやり方には欠陥があるのではないかと、個人的には思っている。他の主要国は新型コロナウイルス感染症（COVID-19）に対し処罰のある国家封鎖で対処しているのに対し、日本の非常事態宣言は外出禁止令ですらない。

　どれだけ素早く徹底した封鎖ができたかが、その後の早期の回復につながることを、我々は昨年の台湾やシンガポール、ベトナムなどの実績で見せつけられた[3]。「8割おじさん」と呼ばれている京都大学医学部環境衛生学教授の西浦博氏は、規制の効果が軽度であれば、今回も宣言解除から2カ月程度で感染は再拡大してしまうとの試算を示している[4]。本来の封鎖・ロックダウンとは、全ての商業・産業施設、そして学校はもちろん、交通も遮断し、違反者には罰則を科すというものだ。

　外食チェーンの店舗をのぞくと、1mすら距離を取っていない席の間にアクリル板を立てた状態で、客が食事している。ショッピングモールのフードコートでは、申しわけ程度の小さなアクリル板越しに、家族が食事している。とても怖くて、私は近寄ることができない。スーパーコンピューター富岳の試算では140cmの高さがあれば対面からの飛沫は防げるとのことだが[5]、そんな大きなアクリル板はめったにお目にかかれない。

　2020年にWHOとCDCは、今回の新型コロナウイルス（SARS-CoV-2）が空気感染する可能性を認めている[6, 7]。単なる飛沫感染では説明のつかない、空気感染を支持する遠距離での感染例も多数報告されている[8-14]。加えて、感染力が増したSARS-CoV-2の変異株も報告されている[15, 16]。

　結核、麻疹、水痘の患者がいたら、どうするだろうか。欧米だろうが、アジア・アフリカだろうが、日本だろうが、答えは隔離である。いち早く患者を確定診断し、陰圧室に隔離し、濃厚接触者を見つけ出す。それから強力な換気である。世界中のどの国の医学生でも同じ答えをするだろう。空気感染する感染症とは、こういうものだ。今後、変異したSARS-CoV-2も同種の感染症だったとされる可能性があるかもしれない。

　最近、コロナの感染経路に関するシミュレーション論文が近畿大学から発表された[18]。医療現場における感染経路を想定した試算だ。論文では、空気感染の比率は比較的小さい。だが、これは最適化用量反応関数パラメーターの設定に依存しており、同値を大きくすれば、その比率は大きくなる。論文中ではSARS-CoV-2ではなく、既に十分な情報があるSARS-CoVによる重症急性呼吸器症候群（SARS）の研究に基づいた値を採用している。SARS-CoV-2ではどうなるのか、真相はまだ誰も知らない。

　アクリル板は、アマビエが描かれた護符ではない。以前には確かに、オフィスや工場での仕切り板による保護が推奨されていたが、状況は変化しつつある上、十分な距離と換気が前提とされる[19]。

　換気の重要性についても、もっと強調されるべきだろう。関西の某私鉄では、この真冬に車外温度と車内温度がほぼ等しくなるくらい換気が徹底されていた。JRなどでは、乗客が自ら窓をこじ開ける姿を見かける。

　おそらく2月に入った頃には答えが出るのだが、病院が開けられなくなり、学校も閉めざるを得ず、スーパーでもクラスターが発生し、役人たちも大量に欠勤したら、その時点で政府にできることは何が残っているのだろうか。

意味がないのは免罪符と化したテレビスタイル