本人確認、連絡手段…ホームレス「ワクチン打てますか？」

新型コロナウイルスのワクチン接種について、路上生活者（ホームレス）などにどう進めるかが課題になっている。自治体は接種券を住民票の住所に発送しており、屋外で寝泊まりしたり、住民票が削除されていたりする人には届かないからだ。国は、相談を受けた市町村が券を再発行することで「接種漏れ」を防ぐ考えだが、接種回数の確認などには本人確認が必要。身分証明書を持っていない人もおり、順調に打てるか不透明になっている。

　福岡市内の教会で15日にあった路上生活者らへの炊き出しに、福岡県社会福祉士会のスタッフの姿があった。食事を求めに訪れた一人一人に接種の意向を調査し、再発行申請書の記述について説明した。

　男性（55）はコロナ禍で飲食店を解雇され、寮も退去した。5月から公園で寝泊まりしており、このままでは接種券が届かない。「一度感染し、無症状だったけど怖かった。受けられるなら少し安心」と話した。

　市は、再発行には運転免許証などの身分証の写しを求めている。決められた回数を接種するためには本人確認が必要で、身分証がない人には「業務を委託する社会福祉士会の調査で、市内に居住していることが分かれば証明書と接種券を発行する」という。

　全ての路上生活者を把握することはできないが、民間の支援団体にも協力を呼び掛けているという。

　東京都渋谷区や横浜市、大阪市は身分証による確認を重視しつつ、持っていない人にも柔軟に対応できないか検討している。横浜市の担当者は「希望に応じる必要はあるが、本人確認をきちんとしないと1日に2回打つことにもなりかねず難しい」。

　北九州市も柔軟に対応する方針だが、担当者は「2回目の接種に来ない場合、どうやって連絡を取ればいいのか」と話す。

　路上生活者は高齢で持病がある人も多く、感染すると重症化の恐れがある。接種が進めば集団免疫の獲得にも近づくが、住居がなくても接種できることを知らない人もいるという。

　NPO法人「福岡おにぎりの会」（福岡市）が路上生活者にワクチンに関する聞き取りをしたところ、41～78歳の59人（15日現在）のうち「打ちたい」「どちらかといえば打ちたい」と答えたのは6割だった。事務局の木戸勝也さん（37）は「そもそも接種を諦めている人が多かった。希望する人みんなが打てるようにしたい」と話した。

　（小林稔子、河野賢治）

接種券再発行の本人確認は柔軟に
　木村正人・東洋大教授（社会学）の話　国が路上生活者にもワクチンを打てるようにしたことは評価できる。1人10万円の特別定額給付金は、住民票を基に手続きしたため、受け取れない人がいた。ただ、接種券の再発行のための本人確認は、診察券や会員証など証明力の弱いものでもいいのではないか。より多くの人が接種できるよう、周知や会場への送迎などの支援も必要だ。

西日本新聞　2021/6/26 6:00
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/760913/

本人がボケて2回以上くるとこまるから、指紋を採取しておくとか