維新「身を切る改革」はアクセルになるか 急造連立が抱える不安 重要政策で自民と温度差

自民党と日本維新の会の連立政権発足から21日で1カ月となった。「ブレーキ役」といわれた公明党に代わる自民のパートナーとして、公約実現の「アクセル役」を自任する維新は肝煎り政策を中心に協議を加速させている。ただ高市早苗首相（自民総裁）と維新執行部の間で一致する連立政権合意書の内容は急ごしらえゆえに、両党間で温度差のある政策も盛り込まれ、対立のリスクをはらむ。

吉村氏は手応え
「高市総裁と合意したことについては、かなりのスピードで実現に向けて進んできている」。維新の吉村洋文代表（大阪府知事）は19日、府庁で記者団にこう語った。

念頭にあるのは、ガソリン税の暫定税率廃止に向けた動きや、医療費削減のために検討を始めた「OTC類似薬」の保険適用見直しなどの社会保障改革だ。吉村氏は「アクセルを踏まなければ日本は置いていかれる」と強調する。

ここ1カ月の発言を振り返っても、維新が「政治改革のセンターピン」（吉村氏）に位置付ける衆院議員定数削減や、連立入りの絶対条件に掲げた「副首都」構想など重要政策を巡る首相と維新幹部の認識は、ほぼ一致している。台湾有事を巡る7日の衆院予算委員会での首相答弁について、吉村氏は「撤回する必要はない」と援護射撃してみせた。

「何を実現」すり合わせ
ただ、合意書にある全ての政策が実現するかは見通せない。自民と維新の協議体での議論を通じ、両党間の温度差が顕在化しているためだ。

来年の通常国会での法案提出を目指す副首都構想では、維新側が災害時の首都機能のバックアップと多極分散型国家における経済成長を訴える一方、自民側は首都機能のバックアップを重視し、現時点で経済成長を主軸に据えていない。

両党は年内に論点を整理し、年明けから法案作成を目指す。自民側の協議体会長を務める宮下一郎元農林水産相は19日の会合後、「法案を作ることによって何を実現したいのか、コンセプトをすり合わせていくことが大事だ」と強調した。

衆院議員定数削減について合意書では1割を目標に臨時国会で法案を提出し成立を目指すとし、両党は①削減の数②方法とスケジュール③削減の実効性確保－の3点に論点を集約した。比例代表を中心とした速やかな削減を主張する維新に対し、自民内には選挙制度とセットで検討すべきだとの慎重論もある。

「足元みられる」
そうした中で維新の藤田文武共同代表が、自身の公設秘書が代表を務める会社に公金を支出していたと報じられ、公金支出に関する党の内規を改定する事態となった。

維新は、母体の地域政党「大阪維新の会」の設立当初から、「身を切る改革」の一環で公金の扱いにこだわってきただけに、党内では「自民に足元をみられるのでは」と懸念する声も上がる。

日本大の岩井奉信（ともあき）名誉教授（政治学）は「自民も維新も党勢が落ち込む中で公明の離脱によって急遽（きゅうきょ）結びついたのが、今の連立政権だ。連立合意は短期間で行われ、丁寧に思慮されたとはいいがたい。今後齟齬（そご）が生じる政策も出てくるだろう」と述べた。

議員定数削減については「与野党の合意が大前提で、今国会での法案成立は難しいのではないか。議員報酬削減のほうがコストを削減できるという見方もある」と指摘した。（江森梓、木ノ下めぐみ）

産経新聞　2025/11/21 08:30
https://www.sankei.com/article/20251121-BBKNJXDX7JJTVNQMW7ZUKGQDCA/