東京から福井県の敦賀を結ぶ北陸新幹線
計画当時は「田舎しか走らないんだしどうせ誰も乗らない」と建設中止を訴える世論も多かったが、開業してみれば黒字路線。最近ではちょっと繁忙期にもなれば乗れないほど混むようになっている
沿線に東海道新幹線でいう名古屋や大阪、東北新幹線でいう仙台のような大都市もないのになぜ北陸新幹線は成り立ってしまったのか、その背景を分析する
開業以前、東京から北陸に至るルートは、上越新幹線で新潟県の越後湯沢に出て、そこから特急に乗り継ぐルートで、北陸中心都市の金沢までは約4時間程度だった
「4時間の壁」こそ割ったものの、途中で乗り換えが必要な手間もあり、決して行きやすい訪問先ではなかったのだ
じゃあ飛行機を使えばいいかというと富山だと航空路線としては短距離になるので「割高感」が目立ち、金沢の場合小松飛行場を降りてからクルマで30㎞も手前に引き返さなければいけない無駄足感があった。福井空港にはそもそも羽田便の発着便がなかった
以上の理由から、電車も不便、飛行機もタイパもコスパも悪いということで、そもそも東京からの北陸までの流動がほとんど存在せず、これが「そんな場所に東京から新幹線を引っ張っても儲からない」とする予測データの根拠になってしまった
そのため、北陸の人たちが都会を目指そうとすると大阪、そうでなくても同じ中部地方でもある名古屋へ行くわけで
経済的な結びつきも、関西か中京との関係の方が盛んだったことが、新幹線以前の常識だった
北陸地方の在住者、出身者にとって最寄りの都会は「東京」になってしまった
新幹線は早い。今まで大阪に行くのと同じくらいの乗車時間で東京に行けるなら、より規模の大きな東京に行くのは自然の摂理で当たり前のことである
いわゆる並行在来線問題か
金曜の夜は取引先と宴を楽しみ、土曜に帰る新幹線を予約した。東京からの旅行者の移動とは逆方向になる土曜のほうが下りは空いていると思ったからだ
ところがいざ乗って目を真ん丸にした。車内は大混雑だったからだ
一体なぜと思ったら、どうやら「北陸人が東京に週末に遊びに行く」というライフスタイルが誕生したことが理由だったようだ
目からうろこだった。田舎の人が東京に行くのは人生で一回の上京だけだと思ったが、住みながら東京に遊びや買い物に行くことができるようになったのは画期的なことである
東北新幹線の場合、青森や岩手で乗った人が仙台で降りるという流動もかなりある(函館旅行の際に乗車して経験済み。仙台で客層の半分くらいは入れ替わる)
東海道新幹線の場合それが名古屋でも大阪でも起きる
北陸に都会がない以上、沿線全員が東京一極集中するようになり、これが結果「乗れないほど混む」現状をまねているのだ
とくに金沢に関しては「金沢バブル」と呼ばれるような現象が発生
兼六園やひがし茶屋町などの古都・金沢の伝統を堪能したり、21世紀美術館をはじめとするミュージアムめぐりをするなど
東京人が週末の一泊二日や三連休のプチ旅行をするのにちょうどいいことから人気が急上昇した。片道4時間だったのが今では最速で2時間半を切っている
そして幸いなことにインバウンド特需が同じ時期に到来。欧米出身者からすれば日本の伝統が溢れる金沢は当然魅力的な場所であるし、東京に来たついでにちょっと足を延ばして金沢とか、あるいはその先の京都まで周遊という感じのゴールデンルートも確立されたのだ
週末は儲かっても平日がガラガラでは・・・と思うかもしれないが、北陸新幹線は黒字路線である
なぜなら、新幹線の最大の収入源であるビジネス需要が北陸地域には意外と多かったからだ
富山ならYKK、石川なら小松、福井は熊谷組など、各県に有名企業が多く、エネルギー系なども含め安定した経営をしていることから
その従業員や取引先の大手企業の人が新幹線を使ってバンバン出張をすることで、平常時のビジネス需要も一定数保っているということである
だからはやぶさは大宮を出ると次はいきなり仙台だ。県庁所在地クラスも含めて地場の有名企業が何もない農村地帯だからだ
仙台は100万都市なので駅につくとスーツ姿の社畜がいっせいに降りるが、そもそも仙台レベルでも地元の有名企業はなんら見当たらないんだ
アイリスオーヤマ?なんか違うような・・・カメイ?うーん全国レベルかというと微妙
「東北の田舎の何もなさ」に起因する先入観から、どうせ雪国で人口も少ない北陸もそのレベルだろ、何なら裏日本だから東北よりなんもねえんじゃないのと過小評価した結果
実際はそうでもなかったので、うれしい誤算が起きているともいえるんだよね
これにより金沢が「仙台的な」支店経済集積地となっている面もあり、それがますますビジネス路線としての北陸新幹線の利用をアシストする要因になったともいえる
これは実際に北陸新幹線に乗ると気づく。浮かれた旅行者だけでなく、リーマンが意外と多い
北陸新幹線ならではの理由ってのが知りたい
地形なんかもどうだろう
車窓でとにかく山が目立つ。つまり平野が乏しく、平地があっても細切れのところに都市が続いている場所が多い。そこを貫くように北陸新幹線は走る
コンスタントに都市が連続することが、北陸新幹線の利用を活性化させた面もあるといえる
函館はただでさえ人気観光地で、そうでなくても北海道第三の20万都市「なのになんで・・・」と思うかもしれないが
理由は函館市以外に都市が道南地域に何もないからだと言える。なんせ駅がある北斗市(函館のベッドタウン)以外に市レベルの自治体が1つもない
富山県の場合、黒部、富山市、高岡に3駅あるが
県内の主要都市はほとんどがそれらの駅の間にある。つまり並行在来線に乗って新幹線の駅に出て、そこから乗り換えるという需要がある
北陸沿線は新幹線開業で切り離された「三セク」がむしろ成功していると言われている。沿線人口密度が高いからだ
なおかつ南側はアルプスの山々で、富山湾に面した平地の新幹線沿線に6~7km間隔で都市が続いている
つまり都市と都市の近さは千葉のベッドタウンの「中電」の沿線とかわらないんだ
かつ、JR時代には特急中心だったダイヤが、特急が抜けることで余裕ができたので、
地元民の地域移動のための電車が増発でき、むしろ昔より便利になってすらいるんだ
鈍行はただ遅いだけでなく「通過待ち」で特急を何分も待たされる必要があるので、距離ではそのまま走ればすぐ行ける場所でも実際には所要時間が何十分もかかったりするハンデもあった
おまけに特急が遅れればそのあおりも受けてしまう。自分たちも遅れているのに、遅れた特急を先にいかすために通過待ちが普段よりも長引くという最悪なことだってあり得たから、地元民は地域レベルの移動でJR利用を避けていたはずだ
地域の足として三セクを利用し、接続ニーズで新幹線に波及する好循環も起きている
これは残念ながら東北・北海道(盛岡以北)では起きなかったことだ
岩手の場合、森岡から先の平行三セクは80kmを超える走行距離があるが、うち盛岡以外で「市」は二戸市のみ
二戸は「市」とは言え人口2万しかいない超過疎地である。他はもっとひどい郡部なので、経営状況が苦しいのは当たり前だ
これは長野も同様である
上田方面からの「しなの鉄道」の長野駅に向かう朝のラッシュ時は5~15分きざみで運行され、非常に混んでいる
上田市、千曲市、長野市と主要都市が連続していることで、鉄道が一定数支持されている
特急「信州」という、東海道線でいう特急「湘南」みたいな通勤ライナーを格上げした通勤専用特急まで走っていて、満員とは言わずとも乗車率は高い
東北は都市間距離が違いすぎる
たとえば福島から山形に向かう奥羽本線ってあるけど、福島駅始発の奥羽本線の鈍行は短いと2駅先の庭坂駅で終点。福島市内で終わってしまう
なぜなら庭坂駅が山形県との県境の峠の玄関で、そのさき20kmくらい人家のないけわしい山の中を走って米沢に抜ける。市としては米沢は隣町だが、あまりに遠すぎるんだ
東北本線も短い列車は藤田駅止まりで、宮城県境の国見峠を越えられない。つまり「人が住んでて地域移動がある範囲」が福島市と周辺以外何もないんだ
そういう中堅の都市が、郡山、福島、仙台、そして160㎞先の盛岡、100km先の八戸とめっちゃ離れている。その合間は郡部がほとんど。市があっても平成の大合併出無理やり・・・がぽつらぽつら
これでは地域輸送は成り立たない
東海道線だったら平塚まで行かないくらい。普通に電車通勤できるくらいでしょ
その間に射水市、高岡市、小矢部市と市が3つもあって高岡にも新幹線の駅がある
実は北陸新幹線の強みは、その「密さ」でもある
北陸新幹線の場合奥に行くほど駅間距離が短くなり、20㎞きってる場所も多い
長野県内ですら「駅が多いな」と思うレベルだがな。駅間が長いのは糸魚川のあたりの山地帯を貫く区間とか、ほんとになのもないとこしかない
都市間距離が短く一定規模の都市が連続する場所が多く、それらを三セクでつなぎながらコンスタントに新幹線駅があることで
共存共栄に成功した珍しい地方都市が北陸沿線なのでありんす












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