【緊急事態宣言】都のコロナ感染「7日平均」500人到達でも宣言解除に慎重な声

東京都で新型コロナウイルス感染者の「7日間平均」が減少を続け、政府が緊急事態宣言解除の目安とする「ステージ3（感染急増）」の500人に近づいている。数値は10日時点で508・3人とあとわずかで到達する見通しだ。ただ、医療提供体制の逼迫（ひっぱく）は続いており、専門家からは現時点での解除に慎重な声が上がっている。

　「解除の話はもう少し先にしてほしい」「できるだけ（数値を）下げる」。10日の都モニタリング会議後、報道陣に宣言解除の見通しを質問された小池百合子知事は、警戒感をあらわにしながら応じた。解除の話題が出ることで、感染防止の取り組みに緩みが出ることを懸念したとみられる。

　政府は宣言解除について、ステージ3相当に下がっているかを踏まえて、総合的に判断するとしている。ステージ3は7日間の新規感染者数が人口10万人あたり25人未満としており、東京なら1日当たり500人未満に相当する。都内の7日間平均はピークだった1月11日（1812・7人）を境に減少に転じ、最近は都が目安とした「1週間前の7割以下」に近い日が続く。近日中に500人を下回る見通しだ。

　しかし、都庁内では早期の宣言解除に慎重な見方が大勢だ。入院患者数は2500人を超える水準で高止まりし、重症者も10日時点で103人と多い。高齢患者を優先して入院させていった結果、入院患者の約7割を60代以上が占めており、都幹部は「回復しても他の病気ですぐに出てこられないケースもある。宣言解除を求めるような状況ではない」と指摘する。

　昼間の人の流れも減っていない。都医学総合研究所が宣言開始の前後で都内の繁華街の人出を調査した結果、夜間は抑えられているが、昼間は宣言前に比べて15・1％増えていた。西田淳志・同研究所社会健康医学研究センター長は、感染者1人が平均何人に感染させるかを示す「実効再生産数」を挙げ、「下がりきらない段階で人流（人の流れ）が増え始めると、再び急激な感染拡大につながる恐れがある」と警戒感を示す。

　東京都医師会の尾崎治夫会長は9日の記者会見で「いま宣言を解除すると4月には第4波になってしまう可能性が高い。ここで100人ぐらいまでしっかり抑えることが、4月以降の状況を良くすることにつながる」と話した。その上で、宣言が長引くことで飲食業界への打撃が大きくなるとして、事業者への補償をさらに検討するよう国や都に要望した。【内田幸一】

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2021年2月11日 8時0分
毎日新聞